Report 量子力学 JS0.5

Preface

量子力学は20世紀初頭,複数の物理学者達によって創始されたミクロ世界を記述する物理学です.量子力学では力学的自然観に取って代わる量子力学的自然観とでもいうべきものが形成されています.その自然観においては量子の粒子性と波動性の2重性こそがミクロ世界の本質であり,事象は確率的に記述されることになります.量子力学は相対性理論とともに20世紀の物理学の革命であり,常識的には受け入れられない概念・原理が登場してくることになります.

 本Report量子力学の構成を説明しましょう.まず,Part1では歴史的記述を行います.19世紀までの古典的な物理概念が破綻し,革命的な物理学がいかに誕生してきたかについて取り扱います.

 次に,Part2では完成された量子力学の1つの形式として波動力学を記述します.波動力学はシュレディンガーによって1926年に創られました.まず,不確定性原理とシュレディンガー方程式という量子力学の根本となる事項を取り扱います.次に,量子力学の2つの基礎概念である量子状態とオブザーバブルを順番に取り上げます.そして,波動力学の展開としての定式化を実行します.さらに,以上の波動力学の一般論を具体的に見ていくため,例を取り上げます.先に一般論をまとめて導入した後,それを踏まえた上で例を挙げることになりますが,これは論理的構成を重視したためです.一般論と並行して,時折,例を見ながら読み進めると良いと思います.

 波動力学で1つの閉じた体系を成しているのですが,量子力学には他の形式が3つ存在します.1925年,ハイゼンベルクは行列力学という量子力学の1つの体系を創り上げていました.さらに1927年,ディラックは,波動力学と行列力学を特殊な場合として取り込んだ完全に一般的な体系である変換理論を構築しました.ここに,完成した量子力学が誕生したのです.その後,時代は下がりますが,1948年,ファインマンは斬新な着想のもとに,経路積分という新しい量子力学を創り直しました.Part3ではこれらの理論を展開します.

 Part4では量子力学の応用的な項目について解説します.特に,素粒子論への準備として重要な内容を扱っていきます.

 

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