Maxwell電磁気学の根幹をなすものは,次の4式からなるMaxwell方程式でした.
これらの方程式から光速 が計算されました.その光速の値 は唯一のものです.そして,この事実はGalilei変換に矛盾します.しかし,矛盾してよいのです.特殊相対性理論においては,Galileiの相対性原理は古い理論としての位置付けになるのです.一方,Maxwell方程式はLorentz変換のもとで共変です.従って,Maxwell電磁気学は修正することなく,本質的にそのままで特殊相対論的であるといえるのです.ただし,Lorentz共変性が一目で明らかになるように,4次元的な形式に書き換える必要があります.(修正ではありません書き換えです.本質は変わりません.)特殊相対論的電磁気学を構築するため,この書き換えられた理論を次の Section で見ていきましょう.
まず,最初にvector potential とscalar potential の定義から見ていきましょう.すなわち,
の式で定義します.このとき,Maxwell方程式の(5.2)式と(5.4)式は自動的に成立することが,次のように確かめられます.すなわち,
と,
のようになります.いずれの変形にも,最後にvector解析の公式を使用しました.これらのpotentialから4元vectorを構成します.
ただし,
としておきます.さらに,4元電流密度vectorと4次元の微分演算子を,次のように定義します.
と,
です.さらに,2階反変tensorを定義します.
(5.5) |
右辺を計算します.
このとき, には と が含まれていますので,Maxwell方程式(5.2)式と(5.4)式は自動的に成立します.また,Maxwell方程式(5.1)式と(5.3)式は次式で表されます.
この(5.6)式が,確かに(5.1)式と(5.3)式を表していることを確認しておきます.左辺は,
ですが,一方右辺は,
です.故に,
となります.これは,(5.1)式です.また,
ですが,一方右辺は,
です.ですから,
となります.これは,(5.3)式の 成分の式です. の場合についても,同様な計算により, 成分の方程式が得られます.
共変vectorと共変tensorについても同様な式が成立します.
(5.7) |
右辺を計算します.
このとき, には と が含まれていますので,Maxwell方程式(5.2)式と(5.4)式は自動的に成立します.また,Maxwell方程式(5.1)式と(5.3)式は次式で表されます.
この(5.8)式が,確かに(5.1)式と(5.3)式を表していることを確認しておきます.左辺は,
ですが,一方右辺は,
です.故に,
となります.これは,(5.1)式です.また,
ですが,一方右辺は,
です.ですから,
となります.これは,(5.3)式の 成分の式です. の場合についても,同様な計算により, 成分の方程式が得られます.
"Lorentz不変性とLorentz共変性" の Chapter での議論から理解されるように,4元vectorで表されるMaxwell方程式(5.6)式と(5.8)式は,明白なLorentz共変性をもっています.従って,この Chapter の最初に述べたように,Maxwell電磁気学は特殊相対論的です.そして,"特殊相対性原理と光速不変の原理" の Chapter で見たように,Maxwell方程式から光速が導出されるので,光速は座標系に依存しません.故に,光速不変の原理が成立することが保証されたのです.