Chapter4 Maxwell場(Vector場)

4.1 Maxwell場の古典論

特殊相対論的電磁気学の方程式であるMaxwell方程式は,次の式で与えられます.

ここで,

です.対応するLagrangian密度は,

で与えられます.このLagrangian密度をEuler-Lagrange方程式,

に代入すると,確かにMaxwell方程式が導出されることを確認しておきましょう.Euler-Lagrange方程式のφは,この場合,に置き換えます.

ここで,

ですが,最後の式の第2項で添え字のμ,νを入れ換えると,の反対称性より,

 

となります.したがって,

なので,与えたLagrangian密度は,

と書き直すことができます.このLagrangian密度の第1項は,

とも書き直すことができることにも注意しましょう.このとき,Euler-Lagrange方程式,

は,

 

 

より,

となります.確かに,Maxwell方程式が導かれました.
 次に,Sourceが無く,の場合を考えます.このとき,Lagrangian密度は,

となり,真空中のMaxwell方程式は,

となります.
 (1)式のLagrangian密度はゲージ不変性をもっていますが,ゲージを固定するため,αを任意定数として,

というゲージ固定項を手で加えます.このとき,Lagrangian密度は,

と,修正されます.ここで,α=1というFeynmanゲージを選ぶと,

となります.この(2)式のLagrangian密度について,一般化運動量を計算します.ここで,前述の式変形と同様に,

と書き直すことができます.さらに,この式の右辺第1項は,前述の式変形と同様に,

とも書き直すことができることにも注意しましょう.また,右辺第2項を,

と変形しておきます.したがって,一般化運動量の時間成分は,

となります.空間成分は,

 

 

となります.

 

4.2 Maxwell場の正準量子化

量子論ではオブザーバブルは演算子で表されることになります.Maxwell場を演算子に格上げした瞬間に,場の量子化が実行されたことになります.この際,演算子は積の順序が問題となりますので,交換関係を設定することになります.このような交換関係による量子化のことを正準量子化といいます.次の同時刻交換関係を設定します.

演算子を表すハットは省略しました.また,場の量は連続量なので,δ関数を使って交換関係を表しています.次に,場をFourier変換します.

単にxやkと書いているのは,

を意味します.したがって,kxの表記で,

を表します.また,ωとの間には,特殊相対性理論の要請より,

の関係が成立します.これを,On-shell条件といいます.このとき,

となります.また,εは偏光ベクトルといい,4次元ミンコフスキー時空における基本単位ベクトル(基底ベクトル)です.εは,お互いに独立ならば自由に選択することができますが,簡単のため,の向きがz方向になるように基準系を設定して,

とします.このとき,光はz方向に進んでいるとしたので,

が成立します.すなわち,λ=1,2は横波成分を表します.そして,λ=3は縦波成分を,λ=0は時間成分を表します.上の具体的表式より,

が成立します.例えば,

等です.つまり,εは規格直交系を形成していることがわかります.さらに,

が成立します.具体的表式より,例えば,

等です.上式はεの完全性を表しています.展開係数に目を向けましょう.これらはエルミート演算子で,次の交換関係が成立します.

交換関係(5)式が成立することを確認するために,場をFourier変換した(4)式をもとの同時刻交換関係(3)式の左辺に代入して,(5)式を使って(3)式が成立することを確かめます.以下,(3)式の第1式を計算します.

に加え,より,も成立します.)

の1次元の式より,3次元にして,
が成立します.さらに前述の,
を利用します.)

確かに,(3)式の第1式が導かれました.第2式,第3式も同様に導くことができます.