電気的現象を取り扱う場合,正電荷と負電荷の間の静電気力が問題となります.(静電気力のことを,今後一貫してクーロン力と呼ぶことにします.)電荷という物質のようなものがある訳ではなく,物質の内部の電子がもっている負電荷と,陽子がもっている正電荷の過不足により,正に帯電したり負に帯電したりするのです.つまり,電荷は素粒子の属性になります.この意味で,電荷は力学における質量と同じような性質をもつ物理量であるといえます.ただし,電荷は正と負がありますが,質量には正しかありません.電荷の単位には(クーロン)を使います. とは の電流が の間に運ぶ電荷であると定義されます.つまり,
となります.電子1個のもっている電荷は ,陽子1個のもっている電荷は です.ここで, は最も小さな電荷の大きさで電気素量と言います.電気素量は次の値をもちます.
ただし,現在発見されているクォークの電荷は電気素量の分数倍であることが判明しています.また,電荷の中で,特にその大きさが無視でき,点のように扱うことができるものを点電荷といいます.
電荷は消滅したり,生成したりしません.このことを電荷保存の法則といいます.この法則が成立する理由は,電荷をもっている電子や陽子が生成したり,消滅したりしないことによるものとされていました.しかし,現代素粒子論によれば,素粒子(電子等.)は生成消滅することが理解されるようになったことに注意しておきましょう.しかしながら,一般に,CPT変換に対しては,必ず保存されることがわかっています.ここで,CはCharge(電荷),PはParity(パリティ),TはTime(時間)を意味します.
全ての物質は電気的性質により,三つに分類されます.一つ目は電気を導きやすい物質である導体です.代表例としては金属が挙げられます.金属が電気を導く性質をもっているのは,その内部にある自由電子のためです.また,電解質溶液も導体の一種と考えることができます.この場合,電荷を運ぶのはイオンです.二つ目は不導体(絶縁体,誘電体ともいいます.)です.この物質は電気を通しません.例としては,ガラス,セラミック,ゴム,エボナイト,プラスチック等が挙げられます.三つ目は導体と不導体の中間の性質をもつ半導体です.例としてはシリコン,ゲルマニウム等が挙げられます.半導体はエレクトロニクスで大変活躍している物質です.全ての物質は三つのうちのいずれかになるので,全ての物質は電気と関係があるということになります.特別な物質だけが電気に関係するのではないということです.
二つの電荷の間にはたらき合うクーロン力の大きさ は,次式で表されます.
この関係をクーロンの法則といいます.ただし, はクーロンの比例定数で,次の値をもちます.
また, は電荷, は電荷間の距離です.電荷 が異符号のときには引力が,同符号のときには斥力がはたらき合います.
クーロンの法則は実験によって発見されたものであり,理論的に導かれたものではありません.特に,何故距離の逆2乗に比例するのかは理論的に導かれるものではなく,何度も精密な実験により検証されるものなのです.(何故,逆3乗,逆1.5乗ではないのでしょうか? 不思議ですね.この逆2乗に比例することから,これからのChapterで見ていく論理の展開がとても綺麗なものになるのです.)